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蒼空_memo

更新履歴やらコメント返信やら、ネタや萌え色々。基本的に好き勝手してます。

唐突に思いついた話
彩雲国の秀麗没後の話。
秀麗と劉輝の娘さんを捏造してます。名前は出してませんが。寧ろこれは夢なのか。
それでも良ければどうぞ。
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「ねえ師」
「何ですか姫様」
「お母様は、そんなにも素晴らしい人だったの?」
「…そうですねえ」

質問するその目には疑惑が満ち溢れていた。劉輝陛下ただ一人の息女。紅秀麗貴妃との、忘れ形見。
その姫は偉大とも言える母のことを何一つ知らない。だからこそ、周りの母への評価が本当なのかが全く解らない。姫はよく母に似ていると言われる。顔形、声、何よりもその純粋で純真無垢とも言え、ただ前だけを見ていく様はまさしく生き写しのようだった。
教育係は少しだけ考える。思い出すのは10代の紅秀麗。
煌びやかな装飾品は似合わなかった。艶やかな紅も似合わなかった。陛下から授かった簪だけは、彼女自身が受け入れているからなのかとても似合ってはいたけれど。紅家の長姫だというのに、質素な服装が馴染んでいたその姿。泥だらけになっても、汗だくになっても、走り回って馬まで乗り回して、ただただ陛下と民のために尽くした女性。
10代のときの、その姿しか見ていない。だが、その後の話を聞く限り死ぬまでその性格と行動は変わらなかった。

「…まあ、一般的に言えば凄かったですよ」
「一般的?」
「女性にしとくのは惜しいほどの、行動力と強運です。男だったらもっと早めに朝廷に上がって出世できてたでしょうねえ」
「…ふーん」
「あとはそうですね、良く言えば純真無垢。ですが猪突猛進なところは否めません。あと頑固ですね。まあそれは紅家の血筋でしょうが。現実主義なのに変なところ夢見がちなところもありました」
「矛盾してるじゃない」
「するでしょう?だって、女人国試が実施されるわけもないのに、小さい頃から勉学に励んでいたんです。そのお陰で見事探花及第をしたわけですが。それは紆余曲折あって劉輝陛下と出逢ったお陰です。ですが、それがなければ、多分一生女人国試が行われることはなかったでしょうね。それでも多分、彼女は官吏のことを夢見て勉強を続けていたでしょう」
「…どこら辺が現実主義者なの?」
「金勘定に関しては誰よりもしっかりしてましたよ」
「……」

静かに話を聞いていた姫は絶句した。…がめつい、というものだろうか。
教育係は尚も話を続ける。

「理想と夢は大きかったですよ。何せ叶わない女人官吏を夢見て勉強してたくらいですから。希望と夢で胸いっぱいの、普通の新人官吏よりも色々思い願うことは多かったでしょうね」

少しだけ遠い目をした。及第した辺りは聞いただけの話だ。それでも彼女の行動は何となく考えられる。それほどまでに、真っ直ぐだった。ただただ、王の官吏だった彼女。

「その内その理想を現実にできるようになったから、凄いと言われるんです。最初はやっぱり色々やらかしてましたが、まあ随分と見違えましたよ。その原動力はやはり王と民のためでしょう」
「……ふーん。師は、やっぱり他の人と違うわ」
「そうでしょうか?」
「ええ、父様も静蘭も燕青も、そうねえ、他の人たちも、大抵良い人だった、凄い人だった。それくらいしか言わないから。褒めるだけしかしないの。信じられないわ」
「あんまり私の話と違いませんよ。結局凄かったんです」
「それは、色々あって、ってことでしょう?そういうことを話しながら、なんて人が居ないの。…ああ、母様ががめつい人だとも知らなかったわ」
「おや言わないほうが良かったですね」
「ううん、良いの。もっと知ってることがあったら、教えて師」
「私で良ければ」

そう言うとどちらもふわりと笑った。
教育係はこの姫様の微笑みは桜のようにほんわかすると勝手に思っている。儚いわけではないが、自然と和むのだ。紅秀麗も小さく微笑むときもそんな感じだった。
暫く経って、姫が疑問に思って口を開く。

「…ねえ師。どうしてそんなにも、母様のことを知っているの?」
「はい?」
「だって、師が朝廷に上がったの、母様が亡くなって10年くらい後でしょう?」

そう言われて教育係は目を細めながらまたふわりと笑った。少しだけ遠い目をしたかもしれない。聞かないほうが良かっただろうか、姫が一瞬だけそう思うような表情。

「…言っても、多分信じませんよ」
「え、何。…あ!もしかして貴陽の下町育ちだったの?及第する前の母様を知ってたとか」
「いいえ」
「えー…。ねえ、何で?」
「…ふふ、秘密、です」

そう言ってまた教育係は微笑んだ。


教育係が15のときに神隠しに遭っていたことを、姫はまだ知らない。
その神隠しの最中に紅秀麗たちと出会っていたことなんて、知るはずもない。
いつか姫様にも教える日が来るかもしれない。まあ劉輝陛下や静蘭、燕青その他諸々の面々にはもうバレている。及第したときの、あの陛下たちの顔は今でも忘れられない。
15のときに神隠しに遭い、紅秀麗たちに巡り会った。
それから何年もの月日をかけて、中央官吏になった。
その後更に時が過ぎ、今では姫の教育係。

教育係は姫に何故なのかせがまれながら、思いを馳せる。
あのとき神隠しに遭っていて良かったと。過去の彩雲国に行って良かったと。
今、姫の教育係をしながら、そう思いを馳せるのである。


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本当唐突に思いついた話です。
もしも彩雲国の続きが出るならやっぱり息女の話だろうなぁと思って、何故かこんな小話が。
色々考えましたが、まあ連載するのは無理だろうしそもそもこの教育係は男か女かとかそっから考えるのが大変で。(えー

こんな設定濃い話あんまりうちのサイトでは取り扱う気はないのでとりあえずココに投下。

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